「お、意外と可愛いね~」
「何…、ですか…」
ざっと5人はいて。
自分の言葉の語尾が
小さくなっていってるのが分かる。
見るからに悪そうな、怖そうな人が、
集団で。しかもあたしの
名前を呼んでいる。
どうして?
あたしは恐怖から、声が出せなくて。
「可愛い声聞きたいんだけど、後で聞かせてね~」
1人の男の人が急に近付いて来て、
白い布をあたしの口に押し当てて来て。
口の中に布が入ると、
思っているほど声が出なくて。
やめて、と叫んだつもりでも、
もごもご言って伝わらない。
おまけに軽々担がれて、
どこかへ連れて行かれる。
じたばたすると、
目の前にナイフが出て来た。
「暴れると、知らないよ?」
笑みが、怖くて。
抵抗すらも出来なくなった。
何が何で、どうしてこうなっているのか。
さっきまで、あんなに楽しかったのに、
どうしてこんな目に合っているのか。
一体何をされるのか、
もう怖くて仕方なくて。
「ここらでいいか」
あたしを担いだ人は、
人気のない小さな空き地に
入って行った。
正直、ここがどこなのかも
全く分からない場所。
助けを呼ぼうにも、
田舎の隅にあるこの場所の
周りに、建物1つなくて。
こんな所、あったんだ。
こんな人がいない所って、
あったんだって関心するくらい
何もない。
公園には、ブランコとジャングルジム。
そして、屋根付きの休憩場所のような
所にベンチか少し並んでいる。
「朱里ちゃん、手後ろでお願いしま~す」
楽しそうな声で、
あたしに話しかける。
異様な光景。
なのに、逃げられない。