「ったく。それでも教師かよ…」
とめどなく溢れてくる血を見て、
あたし自身が何故か痛くなってくる。
そして鼻の奥がツーンとして…
「…、朱里」
「…えっ」
「何泣きそうな顔してんだ」
慌てて頬を手で覆うと、
一粒だけ涙が流れていた。
そうか、さっきの鼻の痛みは…
涙が出る前兆だったのか。
「痛ぇのはお前じゃなくて、俺なの。泣く必要、ねぇだろ」
十夜はふいにそう言って、
あたしの頬を自分の手で強引に
拭ってくれた。
不器用な、十夜の優しさが
痛いほど身に染みる。
「仕方ねぇ、か」
十夜はそう呟くと、
ドアをめがけて歩いていく。
「ちょっと、十夜!…怪我、どうするの?」
「こんなのすぐ治る。大丈…って、おい!」
大丈夫、なんて言っちゃって。
こんな怪我して大丈夫なわけ
ないじゃない。
「朱里、何すんだよ」
考えるよりも先に、
あたしは十夜の腕を引っ張った。
あたしはフジ子ちゃんが座る席に座り、
十夜を生徒が座るイスに座らせて。
「あたしが、手当てする…から」
「は、何言ってんだお前。いいよ、こんなの…」
「大丈夫じゃないよ。痛そうだもん…ばい菌入るから」