「その言葉ずっと待ってた」




「言おうと思ってたんだけど。言えなくて、ごめん」




俺の誕生日は、


朱里に1番に祝ってほしくて。


里菜からの電話も出ずにすぐ切って、


ひたすら朱里からの


電話かメールを待った。


だけど、いくら待っても来なくて。


やっぱりか、って。


そう思って朝まで、電源を切ったんだ。






「今言ってくれたから、許す」




誕生日なんて前の話なのに、


今言われても嬉しい。


もう、俺病気なのな。


朱里がいねーって、


考えられねえのに。


一緒にいてーな。


なんて、思ってると。






「好きなの」





蚊の鳴くような、


消え入る声が。





「十夜が好きなの」





俺の耳に、


聞こえて来て。





「朱里」




嘘だろ、朱里。


嘘だって言えよ。


何で、今、そんなこと。


って、いつからそう、


思ってた?


俺のことを、好きだって、


いつから思ってた?





「ごめん」





苦しめるなって言う、


丘谷の顔が鮮明に浮かぶ。


だからあんなこと言ったのか?


朱里、お前。


何で苦しんだ?


俺の行動か?発言か?


俺自身が、お前を、


苦しめてたのか?





「朱里、ごめん」




ごめん、としか言えない。


何に対しての謝罪なのか、


俺自身もよく分かんねえ。


だけど、何で。


諦めなきゃなんねーんだろうって。


何で、丘谷なんかに


朱里を任せなきゃなんねーのって。


そんなことが頭の中に、


ぐるぐる回る。