「あ、あたしはね、担任に雑用、ほら」
朱里は手に持ってた、
ビンゴのカードを俺に見せる。
そんな行動1つでも、
愛らしくて。
顔が見られなくて、
思わず下を向く。
「十夜、どうしたの?」
何でお前は、
俺の変化に気付くんだよ。
ほっとけよ。
あっちいけよ。
抱き締めたく、
なんだろーが。
「んー、別に何もねえけど」
「お腹痛い?辛いの?保健室、」
「行かない。心配すんなって」
ガキの心配してる小学生みたいで。
いつも朱里は、人の心配ばっかして。
本当に、優しい女。
「ま、朱里に会えたし全部吹き飛んだ」
俺は小さく笑ってみせた。
朱里がどうしたら苦しまなくなるかって。
そんなことを考えて。
こいつのこと、諦めるとか。
そんなこと思ってたら、
なぜか自然と想いが言葉になる。
「ここにいたら会えるかなって、思ってた」
会いたいと思ってた。
今日は遠くからしか見れなくて。
会いたいと思っても、
会えない、俺ら。
「あ、そういえば十夜誕生日だったよね」
何で、今、それを言うんだ、ばか。
なんてのは嘘で、
本当は嬉しくて。