「何であんたがいるの?」
石黒にそう言われて。
固まる俺。
ですよね、うん。
俺がここにいる理由、
分かんないっすよね。
必死に頭を働かせて、
出た答えが。
「何って…、こいつのお守り。手付けたら最後まで世話しねぇとな」
そ、そう。
こいつのお守りだよ。
そう言ってみせると。
何言ってんの、と。
冷たい石黒。
黙ります、ごめんなさい。
「歩けそうか?」
なんやかんや喚く朱里を
おぶって立ち上がる。
背中には朱里、
右手に俺のイス、
左手に朱里のイス。
その様子に見かねたのか。
「あ、藤田。イス持つよ?」
そう言ってくる中山。
なんだ、いいやつ。
やっぱりお前らいいやつ。
「お前も一応女だからな。危なっかしい」
けどいいやつとか言えねえし。
俺はわざと悪態を吐く。
中山は俺の言葉に怒ってたけど。
はいはいって流して、歩き出す。
こいつらといると楽しいなって。
いつも思う。
俺がいたあの頃に戻りてえ。
何もなかった、あの頃に。
「おい、フジ子」
怪我を見ろと、朱里を下ろす。
あら、とフジ子は驚いた素振り。
お前グラウンドにいたんだから、
知ってただろ。
なんて思って。
「何で保健医のくせに、保健室にいねぇんだよ」
と、言ってみる。
俺が勝手にここに連れて来たわけで。
はやとちりしたのは、
俺なわけで。