里菜ちゃん可愛いとか。


お前が羨ましいとか。


いいほど言われて。


ならくれてやるよ、あんな女。


いや、まずあいつといること望んで


ないからな、俺。


お前ら知らねえから、


んなこと言えんだよ。


目の前で死ぬって言われてみろ。


恐怖で動けなくなるからさ。






「あなたの好きな人…です」




はっきり聞こえたその声に。


鳥肌が、立った。


周りはおもしろおかしく騒いで。






「藤田くんじゃない!?」






「藤田、お前だってよ!」





ちくしょうめ。


あ~、お前が藤田を名乗って


くれんだったら、


喜んでお前の苗字受け継ぐけど?


なんならお前ら全員藤田になれば、


全員が俺になれば、


俺がお前ら全員になってやるけど?


一種の抵抗。


したくもなるぜ、こんなの。


望んじゃ、いねーのに。





「十夜…行こ?」





いつの間にか里菜はテントの前にいて。


誰だよ、好きな人連れて来いとか


変な指令出したやつ。


面白半分でやったことでも、


傷付く奴だっているんだぞ。


俺は必死に訴えながらも、


伸ばしてくるその手に


手を伸ばす。


いや、繋ぐのはな。


そう思って、引込めたけど。


隣にいたダチが勝手に、


握らせて。


こそっとお幸せにと。


呟かれる。


お前後で、絞めるからな。


睨みをきかせて、テントを出る。


数歩歩いてはっとする。


うわ、ないわ。


まじでないわ。


よりにもよって、


何で朱里を1番前に座らせたんだ。


こんな俺を見せたかったわけじゃ、


ナインダケドナ。