「…おい、何とか言えよ」




結局俺が折れる。


ばかな俺。


だせえ俺。





「歩けねぇくせに、意地張んな」




精一杯自分の情けなさを


隠すようにして、


朱里の頭を撫でる。


柔らかい髪。


俺はそんなことを思いながら、


ずっと撫でられたらって。


そう思った。


結局俺は朱里をおぶって、


再びグラウンドに戻る。







「ま、お前怪我したけどさ」






歩きながら考える。


こいつが怪我したんなら、


チームに貢献出来ないなとか。


ならどこ応援してもいいなとか。






「テントの1番前、取っとけよ」





それなら、いっそ。


俺だけしか映せなくして。


俺だけしか応援させなくして。


他が見えないようにしてやったら。


いいんじゃねーの、って。







「どう、して?」




少し詰まりながらも、


言葉を絞る朱里。


そりゃそうだわな、


テントの前取っとけって。


おかしいわな。







「決まってんだろ」





だけどおかしいなんて、


フル無視。


そんなの関係ねえから。






「色ちげーけど、応援。俺の応援、しろってこと」





お前は俺の、


好きな女なんだから。


自分で心で声にして、


寒いって思った。


そんなこと言った手前、


自分最近おかしいなって。


思い始めた。