「里菜ちゃんと、上手くいって…る?」



あ~、浮かれてた罰か?


俺に対する嫌がらせか?


何でこんな時に、


朱里の口から。


あいつの名前が出んだよ。






「いってるよ」





むしゃくしゃして、


思ったより低い声。


でも仕方ない。


これは朱里が悪いだろ。


何でここでこの話なんだよ。


もっとあったろーが。






「…、だよね!仲良しだもんね!」





完全下を向いて笑ってる朱里。


…ん?ちょっと、声が。


震えてる?


何でこっち見ねーんだよ。


顔見せろや、朱里め。






「じゃ、行くわ」






ってか、こいつが泣く理由


ねーな、うん。


万が一あっても、


いや万が一はないか。






「ありがとな、これ」





俺は悪戯心で。


目の前で俯いたままの頭を、


くしゃっと撫でた。


顔見せねえ、お前が悪い。


少しでもドキドキしねーかな。


少しでも、俺のこと考えねーかな。


そんな意味を込めて、


思い切り、撫でる。


だけど朱里はさっきより


大きく頷くだけで顔を上げない。


まあ、いいか。


俺は名残惜しかったけど、


朱里を置いて保健室を出る。


背中に視線も感じない。


あ~、どうやったら朱里は、


俺を想うようになっかな。


そうなったら、俺。


絶対守ってやんのにな。


そんなことを考えながら、


お世辞にも上手いと言えない


手当ての仕方を見て、


1人気持ち悪く


にやけてしまった。