バカ女が、リサの事を「京真の彼女?」と聞いてきた時。



俺はわざと何も答えなかった。



リサが何と言うか聞きたかったから。



・・・リサの口からはっきり「彼女です」っていう言葉を聞きたかった。



リサは俯いたまま。



勝手に俺に付き合えと言われて、勝手に彼女にされて迷惑だったのか・・・



そういえば、リサの俺に対する気持ちは全く感じられなかったしな・・・




恭介が「俺の彼女」って言った時、何言ってんだよ!!ってぶん殴りたかった。



でも、俺は黙っていた。



勝手にリサの彼氏面していたのが、ケンタたちに知られたくなかったから・・・



今まで女に苦労したことない俺が、一人の女にあたふたしてるのを知られたくなかったから・・・



恭介が羨ましい・・・し、ムカツク。



リサをみんなの前から普通に連れ出すんだ。



俺だって、ホントはリサに俺の気持ちをぶつけてぇし。



独占したい。



コイツは俺の女だって、世の中全員に見せ付けたい。




女々しいな・・・俺。



リサの気持ちを確かめるようなまねばっかしてさ。



メールだって電話だって、自分からすりゃいいじゃん。



携帯を開けたり閉じたり、センター問い合わせしたり・・・



どんだけちっちぇ男だよ・・・



リサから連絡がない数日間、生きた心地がしなかった。



リサに会いたくて、リサに触れたくて、リサを抱きしめたくて



気が狂いそうだったのに。








「今頃、恭介とリサっち・・・」



ヒロトが意味深な事を呟く。



「恭介、かなりあの子に惚れてそうな雰囲気だったからなぁ。」



シュンが追い討ちをかけるように俺に言った。







「け~~~いま♪来たよ♪」




俺の前に女が現れる。



「ドコでする?ラブホ?」



馴れ馴れしく俺の横に座って、俺の太腿に手を乗せる。





「・・ってか、誰お前・・・」



「何ソレぇ??忘れたふり??さっき、メールでよんだじゃん??」



・・・あぁ・・・そうだっけ。



「ってか、やっぱいいや。俺用事できたから帰れ。」



「はぁ?なにそれ!!意味わかんないし!!シテから帰るから♪」





あぁぁぁぁぁぁぁ・・・うぜぇ・・・・




「うぜぇから、うせろ、バカ女」




俺は、それだけ言って女の手を振りほどいて立ち上がる。






「わりぃ、俺ちょっと出るわ・・・」




ケンタたちにそう告げると、ケンタたちはニヤっと笑ってシッシッと俺をあしらった。






店のドアをゆっくり閉めて、外に一歩出る。




そこから記憶が無いくらい走った。




リサのメモリーを出して、通話ボタンを押す。



じれったい、コール音がイライラさせる。



出ろ・・・リサ。



早く出ろ・・・・



早く出ろっっ!!!!











プツっと電話に出たような音に反応する。




「りさ?!俺だけど・・・」



「お掛けになった電話番号は・・・電波の届かない場所におられるか・・・」




無機質な声がリピートされる。





マジ、有り得ねぇ・・・






それから何度もリサにかけたけど、リサに繋がる事はなかった。






恭介にかけるか・・?




いや・・・だめだ。




そこは男のプライドが許さねぇ・・・





メールする・・?



でもメールじゃぁ、リサの声が聞けねぇ・・









リサ・・・



今すぐ会いたいんだけど・・・





リサ・・・・



--------------


「あぁ!!美味かった♪」



「うん、ホント美味しかったね。」



あたしと恭介くんはラーメン屋さんを出る。



正直・・ホントはお腹なんて空いてないんだけど・・・



でも・・・少しの間でも京真の事を忘れる事が出来てよかったかも・・・




「・・どうする?これから・・・」



「え??どうするって??」



「あ・・ホラ、せっかく学校サボったし・・天気いいし・・・どっか行っちゃう??」



「うーーーーーーん。どうしよ・・・」





ラーメン屋さんの前で恭介くんとどこに行こうか考えていると、




「あれぇ?!また恭介たちじゃん?!」



ケンタくん、ヒロトくん、シュンくんが現れた。





「ウゲっ!またお前らかよ・・・」



恭介くんは露骨に嫌な顔をする。



「行動パターンが同じなんだよ・・俺ら。」



「てか、さっきは見事な略奪でしたなぁ♪恭介くん♪」


シュンくんが恭介くんの肩に腕を回し、頭をホールドする。




「う、うっせー!!離せって!!」


恭介くんは真っ赤になりながらその腕を解いた。




「ってか、恭介、京真に会わなかったんだ??」



「なんで、京真に会わなくちゃいけないんだよ?また、今頃女じゃねぇの?」



・・・あたしは、《女》ってフレーズにツキっと心が痛んだ。






「残念♪その女を追っ払って、リサっちを追いかけてったんだけど??」




・・・え・・?あたしを追いかけた・・・?








あたしはポケットから携帯を取り出して開ける。




・・・あ・・・電源落ちてる・・・。




もしかして・・・京真から連絡入ってたかも・・・




「どうする?リサっち。京真に連絡する??」




ケンタくんは《京真》と出された携帯の画面をあたしに見せて聞いてきた。




・・・どうしよ・・・ホントにさっきあたしを追いかけようとしてくれたの??



ホントに??





「リサ!!あんなヤツにかけなくていいから!!」



恭介くんがその携帯を取り上げてケンタくんに手渡した。




ケンタ君たちは、一瞬視線をあたしたちからそらせて、ニヤっと笑う。


「・・必要ないみたいだね」


小さすぎる声で聞き取れなかったけど、すぐにその意味がわかった。










「恭介??誰があんなヤツだって??」











あたしと恭介くんの後ろから、低く落ち着いた声がした。








「ゲッッ!!京真っっっ!!」





「よぉ。恭介♪さっきはよくも俺の女を連れ出してくれたな・・・?」




・・・《俺の女》・・・??




「っつうか、リサ、なんで電話出ないんだよ?!」




「あ・・・電源落ちてて・・・」




「俺言ったよな?メールとか電話は頻繁にしろって・・。」




「・・・・・・」




「それに、なんで恭介に連れて行かれてんだよ?!」




「それはお前がっ・・・っ」


恭介くんが京真に話そうとした途端、恭介くんはケンタくんたちに腕を掴まれ、後ろに引っ張られて行った。





「・・・・・・」




「リサ、なんとか言え」








・・・あたし・・・なんだかわかんないけど・・・


物凄く・・・腹が立ってきた・・・



キレるってこういうことなのね・・・














「・・っによ・・・」



「は?なに?」



あたしはスゥーーっと空気を吸い込んでおもいっきり怒鳴った。





「なんなの?!その態度!!初めて会っていきなり《俺と付き合え》とか言ってきて!
おまけに、メール報告はちゃんとしろとか言うくせに自分からはメール一つしてこないじゃん!!
好きとか一回でも言ってくれた事あった?!
あたしのファーストキスだって、いきなり奪うし!!
こっちは、そういうの慣れてないから、すっごくドキドキしてたんだから!!
だんだん京真の事気になりだして、好きって思い出した途端、あたしの事を彼女って言ってくれなかったり・・・
・・で?他の女の子とエッチしたんだって?!
どんだけ軽い男なの?!バッカじゃない?!いっその事去勢でもしてきたら?!
あ、あとね、あたしと付き合うって何かの罰ゲームかなぁとか悩んだりしたんだから!!
こっちはね、京真に似合う女の子になろうとして努力してたんだっつうの!
わかる?!この気持ち!!
そんなに他の女の子がいいならあたしの事はほっといてよ!!」










・・・スッキリした・・・


あたしは、もう一度深呼吸をした。






ハッとまわりを見ると、恭介くんも、ケンタくんも、ヒロトくんも、あのシュンくんも唖然としている。







うぅ・・・なんだか、言うだけ言ったら涙出てきた・・・











泣くところなんか見せたくない・・・



あたしは俯いてギュっと手を握り締めた。




すると、フワッと大きな手のひらに顔を包まれて、グイっと上に向けられる。




視線の先には優しい顔をしたけ京真の顔があった。





「・・なんで、そういうことをもっと早く言わないんだよ?」




京真があたしを真剣な目でみて、あたしの目じりの涙をふき取ってくれる・・・




「え??」




「俺は・・・ずっとリサが俺の事を好きって言ってくれるのを待ってた。
なのに、リサは全くそういう態度も素振りもみせないから・・・」




「だって・・・京真だって・・好きって言ってくれなかったじゃない・・」




「俺はその代わりに学校に行ったり、膝の上に乗せたり・・リサに纏わりついてただろ??」




「そんなんじゃ・・わかんないよ・・・京真、浮気だってするし・・・」




「うぅ・・ソレを言われると辛いけど・・まぁ、それは・・・勢いっていうか・・リサが恭介と仲良くしてたから・・・その・・・アレだ・・・」




「ヤキモチ?」




「・・・そうとも言う・・・」





「・・・もうしない?」





「リサがいるからしない・・・」





「じゃぁ・・ちゃんと言って。」





「・・・一応聞くけど・・何を?」





「京真の気持ち・・・あたし聞いた事ないから・・・」





「仕方ねぇな・・・」




京真は、あたしをギュゥゥっと強く抱きしめた。




そしてあたしの耳元で小さい声だったけどはっきりした口調で言った・・・








「リサ・・・初めて会った時からリサが好きだ・・・」













・・・初めて男の子に好きだって言われた・・・



また、胸の奥からキューーーーンという何かがこみ上げてくる。





「・・・で、リサは?」





「あ、あたしも・・・京真が好き・・」





あたしは京真の背中にまわした手をギュッとした。





「これからはちゃんと京真からもメールしてくれる??」



「当たり前」



「浮気しないでね?」



「他の女なんて必要ねぇから」



「あたし髪型変えたんだけど・・・」



「知ってる・・めちゃくちゃ可愛い。リサこそ、そんなに可愛くなると俺が心配なんだけど?」



「アハハハ。大丈夫。あたし、京真しか見えてないから。」



「・・よしよし・・・」



「ねぇ京真・・もう一回言って?」



「何を??」



「・・・さっきの・・・」




フフっと笑って京真はあたしの耳元に唇をつけて言った。







「・・リサが好きだ・・」
















---------------








終わり





→おまけ

















「なぁリサ・・」



「なぁに?」




京真はまたあたしの耳元に唇をつけて言った。





「早くリサの《初めて》を俺に頂戴♪」






あたしは、一気に顔を上気させる。



「な、な、何をいきなり・・・」




「俺我慢できないかも・・・」



京真は色気を帯びた熱いまなざしであたしを見る。




「まぁ・・とりあえず・・久々にチュウしとこうか♪」




京真はあたしの顔をガシっとホールドした。




だんだん京真の顔が近づいてくる・・・



ひゃぁーーー・・・・





・・・ん?・・・




唇に当たったのは無機質で、でも柔らかい質感・・・





唇がくっつく直前にケンタくんがあたしたちの唇の間に何かを挟んだようだった。