「んじゃぁ、とりあえず・・・連絡先教えて?」



山井くんはそう言うと携帯を取り出した。



あたしは携帯を取り出して山井くんに渡す。



山井くんも京真同様、手馴れた感じで携帯をいじった。




「よし♪OK!明日とか暇??まずは髪型とか変えようか・・」



「うん!!明日は大丈夫・・・だけど・・・京真にばれないかなぁ・・
毎日会うって言ってたし・・」



「京真が?!毎日?!マジ?!・・・相当だな・・」



「うん・・メールも頻繁にしないとダメって・・・じゃないと毎日あたしの学校に行くぞって・・」



「・・へぇ・・・あの京真がねぇ・・まぁ、数日はなんとか誤魔化しな?」



「う・・うん。わかった!!」



「んじゃぁ、俺は京真んとこ戻るから。ちゃんと京真にメールしとけよ??」



そう言うと、山井くんはクルっと向きを変えて、さっきのお店に戻ろうとした。



「うん!!じゃぁ、明日ね!!山井くん!!」



「・・あ・・・」



また山井くんが振り返る。



「・・その《山井くん》ってやめてくんない?《恭介》でいいからさ。」



「・・うん・・わかった・・。恭介・・くん?」



「んー・・まぁ、それでいいや♪んじゃ、明日ね?」


恭介くんは少し顔を赤らめてまたお店の方向に歩いていった。





あ・・・京真にメールしといた方がいいかな・・・


あたしはポケットから携帯を取り出して開いた。




あ。でも・・・さっきの女の子といるだろうし・・。



《彼女だ》って言ってもらえなかったのに、彼女面していちいちメール入れるのもなぁ・・。


あたしは、京真に相応しい女の子になりたくて、これから頑張ろうとしてるのに。



京真は・・・うーーーーん。



あたしはそのまま携帯を閉じてまたポケットにしまった。








--------------




「京真?いいの?リサっち・・・」



ケンタが俺の顔色窺いながら聞いてくる。



さっきから頭の中で、恭介の「俺の彼女だよ」って言葉がリピートする。



りさはただただ顔を強張らせて俯くだけ・・・



なんで否定しねぇんだよ。



ってか、恭介意味わかんね・・・



りさが恭介のタイプど真ん中っていうのは、なんとなく気付いてたけど・・・



俺からりさを連れ出すなんて有り得ねぇっしょ。



ノコノコついて行くりさにも腹が立つ・・・








「京真ぁ、久々にシヨ♪」



さっきから俺の右側でくねくね纏わりついてくる女がウゼェ。



誰、コイツ。



顔はなんとなくわかるけど、名前知らねぇし。



前にヤッタ女だろうけど・・興味わかねぇから記憶にもない。



こういうの今頃後悔すんだよなぁ・・・



すぐに股開くような女つかまえて、適当に腰振って。腰振りながら「名前なに?」って聞いて。イッた瞬間、そういう女の名前を記憶から消去。



情けねぇ・・・俺。






ふとテーブルの上の携帯を見ると、メール受信を知らせる点滅。



りさ??



右手は女で塞がれてるから、左手で携帯を開く。



・・・りさじゃねぇし。



なんでメール入れない??



まだ恭介といる??



何してんだよ・・・??





携帯を閉じてテーブルの上に放り投げる。



・・と同時に店の入り口から恭介が入ってきた。






「ただ~いま♪」



「お?恭介?!リサっちは??」



俺が聞きたいことをヒロトが聞く。



「あぁ、リサなら帰ったよ?なんか用事思い出したとかで。」



《リサ》て呼び捨てかよ・・・




「ふーーーん。残念・・・ってか、恭介、リサっち、彼女なんだ??」


ケンタはわざとらしくニヤっと笑って俺を見ながら言った。



「さぁね??」



恭介も俺をチラっと見ながら答えた。







「アホらし・・・おい、行くぞ」



俺は、纏わりつく女の腕を掴んで立ち上がった。



「京真?!帰んの??」


三人が一斉に俺を見る。




いちいちめんどくせぇ・・・




「コイツで軽く出してから帰るわ」






俺はそのままその女をトイレに連れ込んだ。



------------


翌日。



昨日京真にまったく連絡入れなかったけど・・・



また学校に来てたりするかな・・・



・・・なんて・・・んな訳ないか。



昨日はずっとあの女の子と居たのかな・・・



はぁ・・・



なに考えてるんだろ、あたし。



出会って数日の相手に振り回されてさ・・・



一生懸命可愛くなろうとか思っちゃったりしてるし・・・



・・・重症・・・







結局。



学校の前には京真は居なかった。



ホッとしてる半面、なんだか悔しいとういか・・淋しいと言うか・・



だから昼間も京真にメールを入れることも出来ず・・・





・・きっとこのまま自然消滅になっていくのかな・・ってか、元々付き合ってないってオチで・・・?



はぁ・・・なんなのこういう気持ち・・授業内容が全く頭に入ってこない。





・・ブブブっ・・・ブブブっ・・


ポケットの携帯がバイブする。



ひょっとして京真?!



あたしは机の下で携帯を開く。



【今日、リサの学校の裏のコンビに前でまってるわ♪】



恭介くんからのメール。



【了解です】



・・てか、もう京真好みに変わる必要ないのかも・・なんて思いながら返信した。



授業後、あたしは恭介くんが指定した場所に向かう。



そのコンビニはあたしの学校の裏手。



普段は通らない裏門を抜けてると、恭介くんはすでにいた。



「恭介く~ん!!ごめんね!!待たせた??」



「おぅ!大丈夫さっき来たばっかだから。」



恭介くんは携帯をいじりながら言った。




「んじゃぁ、行こっか。とりあえず、俺の知り合いの美容院行って髪型変えようぜ♪」



「うん!!」



あたしは恭介くんの後ろをついていった。




「・・・りさ??なんで俺の後ろ歩くの?話できないじゃん?」



恭介くんは顔だけ振り返りながら言った。



「あ・・なんとなく・・。その・・男の子の隣歩くとか慣れてなくて・・」




「プっっ!!変なの♪気にしなくていいから、ココおいでよ。」



恭介くんはそう言って恭介くんのとなりを指差した。




「し、失礼します・・・」



「職員室じゃないんだから失礼しますとか要らないし♪
ってか、京真大丈夫そ??」



「あ・・・実は・・・昨日今日と京真に全く連絡してないの・・・」



「はぁ?!?!マジで?!?!京真からは?」




あたしは首を横に振る。




「そっか・・・京真何考えてんだろなぁ・・・」



「・・ねぇ、恭介くん。昨日の女の子って・・」



「んぁ?・・あぁ・・」



恭介くんは気まずそうな顔をした。



「・・やっぱり・・あたし、イメチェンやめようかな・・」



「なんで??」



「うーーーん・・意味がないというか・・・」



「いいじゃん♪女の子なんだから、可愛くなろうってするのは♪リサ、せっかく可愛いんだからさ、もっと磨きかけちゃえ♪」



「・・・・・・」



「・・なに??」



「そ、そんな風に言われたの初めてだから・・・照れちゃう・・」



「おいおい・・コッチまで照れてくるから・・・」




あたしたちは二人で笑った。



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おせぇ・・・



これだけ生徒が帰ってるって事は、確実にもう授業は終わってるはず。





昨日からりさから全く連絡が来ない。




さすがに昨日は俺も訳わかんない女とヤッちまって、罪悪感でいっぱいだったから、
りさからのメールが来なかったことにホッとしてたんだけど・・・



さすがに今日も連絡が無いのは納得いかねぇ・・・





メール入れてみるか・・・



電話の方が早いか・・・



いや・・・待てよ??



りさは俺を彼氏だって認めてくれてない訳で・・・



そんな状態でメールなんてしたら、ただのウザイ男でしかないか。



勢い、憂さ晴らしの為だったとは言え、昨日の女との事とか知られたらマズイしなぁ・・・






「あれ・・?りさの彼氏さん??」



声がする方に顔を向けると、りさの友達が立っていた。



グッドタイミング♪



「りさは?」



・・その友達は俺から視線を外して一瞬考えてから言った。




「りさなら、今日は体調不良で早退しましたよ?」




「・・早退??」



「はい。相当しんどそうだったから、連絡入れれてないのかも!!」




「ふーーーん・・・アリガト」




俺はそう言ってその場を離れた。





・・・多分嘘だな・・・あの友達はりさを庇ってる。



じゃぁ、りさはドコ??



ふと、恭介の顔が浮かんだ。



アイツ、今日学校終わったらそそくさと帰っていったけど・・・



りさ絡み??



恭介に電話を入れてみる。




ー・・・プルルルル・・・プルルルル・・・プルルルル・・・プルルルル・・・-




常に携帯を手にしてる恭介が電話に出ないなんておかしい・・・。



なにかあるな・・・。



りさにも電話入れてみるか・・・



りさと番号を出してコールボタンを押そうとして・・・やめた。



もし、恭介と居たら・・・俺、普通じゃいれねぇかも・・・。



あぁぁぁぁぁ!!なんかムカツク!!!!






俺はそのまま、いつもの店に向かった。

・・・ブブブっブブブッ・・・



携帯を開くと祐美からだった。



「もしもし?どした??」



「今、正門に彼氏いたよ?!りさ、彼に連絡してないんだ?!
とりあえず、今日は体調不良で早退したって言ってあるから!!」



「うぅぅ!!アリガト・・・ゴメンネ・・・変な気を遣わせて。」



・・・・ヤバイ・・・・?


京真が学校に来たんだ。





すると恭介くんが叫んだ。



「ウゲッ!!京真から電話鳴ってるし!!」



携帯の画面をあたしに見せてくる。



「うぅぅ・・・ヤバイかなぁ。どうやらさっき、あたしの学校の正門に来てたらしいの」




「マジ?!?!ヤバイっしょ・・・うーーーーん。でも・・まぁ、いっか♪」



「えぇぇぇ?!大丈夫かなぁ。」



「アイツもアイツだし。りさを責める事はできないからさ♪」



「え??どういうこと??」



「・・内緒・・ってか、りさには絶対言えないから。」



「・・・気になるけど・・・聞くのも怖いからやめとく。」



「そうそう♪気にしない♪」


そう言うと、恭介くんはあたしの頭をポンポンとした。






美容院に着き、恭介くんが雑誌を片手に美容師さんにアレコレ話している。



「髪の長さはあんまり変えずに、カラーと、ポイントでふんわりパーマとかやっちゃって♪ってか、りさ、学校厳しい??大丈夫??」



「うん、うちは大丈夫。」



「了解♪ってか、彼女??前のバカっぽい子より断然この子の方が可愛いじゃん♪
この子磨けば光るわね♪ライバル増えちゃっても知らないよ??」


「マジかよ!!ライバルはいらねぇ!!!でも、もっと可愛くしてやって!!」



あたしはふたりの会話に俯くしかできなかった。



恭介くんって、いろんな人と話合わせたり出来るんだなぁ・・・凄い・・・




数時間後・・・



「はい♪出来上がり♪」



あたしは美容師さんにクルっと椅子を回されて一周した。



ミラーの中のあたしは、さっきまでのあたしとは全然違って・・・



まるで別人・・・



正直、自分で可愛いって思ってしまった・・・




「すげぇ!!!!りさ、すげぇ!!!」



ミラーに恭介くんもうつる。



「ど、どうかな・・?」



「うっっ!!そういう顔で見んなって!!めちゃくちゃ可愛い!!マジで!!」



恭介くんが興奮気味に言ってくれて、とても嬉しかった。



「よし!!明日は服見にいこうぜ♪」



「うん♪」





あたしたちはそのまま美容院を出た。