「じゃあ、そろそろ行くわ」








そうやっくんが言うと、


あっちゃんは俯いてあたしの服の裾をぎゅっと握る。







そんなあっちゃんの手を、あたしが振り払える訳もなくて……



困った表情でやっくんを見る。






やっくんは小さくため息をつくと、




あたしの服の裾を握っていないほうの手を掴んで、強引に引っ張る。







不意打ちに引っ張られたあっちゃんは、



ふらっと揺れて2、3歩後ろに下がり、あたしの服の裾を握っていた力が緩くなる。







「ほら、行くぞ」





やっくんはまた、あっちゃんの腕をグイッと引っ張って家の前に止まっている、やっくんちの車に歩いて行こうとする。






「……」





あっちゃんは俯いて黙ったままだけど、




足に力を入れているらしく、やっくんに引きずられる形で車まで向かう。







「あっちゃん…!」





そんな姿が見ていられなくて、反射的に腕を伸ばそうとすると



パシッと、海にその腕を掴まれてしまった。