「あぁ!許せねぇ、アイツ!」


バンッとリビングの机を叩いた畑見くん。



今にも飛び出して行きそうな勢いの畑見くんを、

冷静に高橋くんが


「落ち着けよ」


そう言った。




今日は、高橋くんに可愛いって思って欲しくていつも巻かない髪を巻いて、

満面の笑みで家を出て行ったあっちゃん。



ただ、純粋に高橋くんを思っているだけなのに、

どうしてそう、邪魔されないといけないんだろうか。



あたしには分からない、片思いの辛さ。



片思いはしたことあるけど、海程好きになった人はいないから。




海を好きになった時には、もう両思いだったから。




「た、高橋くん」


あたしが高橋くんの名前を呼ぶと、

下げていた顔をあげてあたしを見る。




「あの、今日のあっちゃんの髪……いつもと違うの知ってた?」

「はい、気づきました」






そう言った高橋くんの表情は、優しくて、

高橋くん本人も気づいていない気持ちがあるんじゃないかな?

そう思った。




「そっか……。可愛かったでしょ?あれ、あたしがやってあげたんだよ」


そう言うと、

高橋くんはふっと笑って


「はい、可愛かったです」

そう言った。