スッと立ち上がった海を不思議に思い、

無意識にスーツの裾を掴んだ。



海は、「ん?」と振り向きあたしを見つめる。


あたしは熱でもあるのか、
自分でもよくわからない行動をとってると、頭の隅で思いながらも、


きっと今は本能のままに動いてるんだろうな……

そう、勝手に納得していた。


あたしがなにも言わず、ジーっと海を見ていると、

海はふっと笑ってあたしの耳元に唇を近づけると、



“愛してる”そう優しい声で囁いた。


そんな声に、ゾクゾクしながらもさっきからあったモヤモヤが少し晴れた気がした。



「膝かけとってくる。なんか飲み物いるか?」



あたしはブンブンと首を横に振ると、

また海はふっと笑って、


あたしがスーツの裾を離したのを確認すると、自室に入って行った。




その瞬間、ずっとあったハラハラドキドキの緊張感が

プツン―…と切れた感じがして、


すぐに眠気が襲って来た。


自室から出て来て、

洗面所に入る海の背中を見てあたしは深い深い眠りについた。