「はぁ……。」


思わずため息がこぼれる。

重い空気に沈黙を破ったのは、今度は修一だった。



「さっ、彩行こう」

「え?どこに?」

「え、入学式に決まってんだろ?」


ははっと笑う修一は、福田の手を掴んで歩き始めた。


福田は躊躇しながら、後ろをチラチラ見る。



俺は萌亜の脇に腕を入れて、ぐいっと立ち上がらせた。


「……へ?」

「大丈夫か?」

「う、うん……」



その表情は“大丈夫”とは言えない。



入学式が終わったら、ちゃんと話そう。


そう、心に決めて萌亜の手を握る。



そうすると、萌亜はギュゥっと強く握り返してきた。

先を歩く福田が、


「萌亜、早く♪」


明るく萌亜を呼ぶ。


萌亜も少し緊張がなくなったのか、


「うん…」


少し辛そうな笑顔で言った。


萌亜が歩けることを確認すると、

いつもよりペースを落として向笠の横を通りすぎる。


向笠は、萌亜にも俺にも話しかけることなく、



そのあと、修一と福田と一緒に4人で入学式に出た。