今では俺の一部だけど、そいつにもちゃんと名前がある。


森下宏(ひろむ)。


声しか聞いたことないけど、なんだか冷めた奴だ。


久しぶりにその声を聞いた。


俺が心を閉ざしていた間、宏は一回も俺の中で言葉を発しなかった。


―どこか...遠い所へ。

―タクミたちを迎えに行かなくていいのか。

―...あぁ、迎えにいかないと。


そうだ。


俺たちは4人で逃げるんだよ。


でもいくら呼びかけても、ノアからの返事はない。


...あいつ―
もしかして、もう捕まったのかな?


でも、有り得ない。


昨日の時点から音信が途絶えているのだから...