覚えてない。


―当たり前でしょ。ユメより先にあたし達が帰らされたんだから。


そっか。


薫の言葉に納得した。


目の前で劫が不審そうにあたしを見ている。





「...どうした?」

「あっ、いや、何でも!
それよりさ、食べ物ないかな?」

「は?」

「お腹すいちゃって。」

「それなら、母さんが買ってきた林檎は?」




机の上に置いてある林檎を指さした。


白いお皿に載ってるせいかな。


林檎がとても赤く、生々しく見える。