そこには家族らしき人達と咲弥に空賀君が笑顔で写っていた。
『これは離婚する前に家族全員で撮った、たった1枚しかない家族写真』
写真から目をそらし、呟くようにそう答えた。
私、悪い事しちゃった。
「ごめん」
『別に気にしないから』
いつもと真逆に顔がしょんぼりしている。
やっぱりこんな事聞くんじゃなかった。
咲弥を傷つけるだけだ。
『毎日、毎日、寝る時は下から母さんと父さんが喧嘩してる声が聞こえた。
父さんが母さんを殴ったり、物を投げたり…
俺はそんな光景が大嫌いだった』
私が咲弥の立場なら、きっと耐えられない。
泣いてばかりの日々だったかもしれない。
「殴るって…」
殴ったり物を投げたりする人だなんて。
写真ではそう思わない。
爽やかで優しそうな人なのに。
中身は乱暴な方なんて。
『だから俺は一度喧嘩を止めた。
だけど、『子供のくせに、邪魔だ。消えろ』って、俺を殴った。
母さんは俺を庇い、沢山暴力を受け続けた。
それから1年後、離婚した』
咲弥は拳を思いっきり握った。