茶色の大きな扉を開けると
何とも言えない
古ぼけた本の
優しい香りに包まれた。
私は
ずっと読みたかった
英語で書かれた
シェイクスピアを探し、
日差しがあたる
奥のテーブルに
行こうと思った。
本棚を抜けると
ドサドサドサ……
手に持っていた
全ての荷物が落ちた。
ねぇ、どうして?
私これから何日もかけて
探そうと思ってたのに…
見間違えじゃないよね?
なんだか
何がなんだかわからなくなって
自然と涙が溢れてきた。
私の手から落ちた
荷物の音に気づき
“彼”はゆっくりと
立ち上がり、
私に近づいてきた。
「…落ちました…ッ…。」
全ての荷物を拾い、
優しく私に渡そう
と顔を上げた瞬間
彼の表情が変わった。
「………ア…キ??」
私は驚きと嬉しさから
声が出なかった。