今起こった事を、理解するのに数秒かかった。

あーそっか……
うちは竜斗に打たれたんだ。


その事を理解した瞬間、何かが途切れたかのように、涙があふれ出た。


また……自分で決心した事を守れなかった。


もう泣かないって決めたのにな。


まだ痛みの残る右頬を、手で押さえながら竜斗を見ると、竜斗は自分の手を見つめたまま、固まっていた。

竜斗は自分がした事が信じられないみたい。

竜斗は優しいもんね。
女の子に手をあげるのなんて、初めてなんだろう。


うちは………
うちはさっき、何を言った?


我を忘れて、竜斗にぶつけた言葉をゆっくりと思い出してみた。



…………嘘。

最低だ……うち。
思ってないとはいえ、我を忘れていたとはいえ、自分が言った事に思わず絶句した。


すると竜斗は、我に戻ったのか、うちを気まずそうに見た。


「ち、知里……ごめん」


「二回も、振られちゃったんだね、うち。こんな風になるなら、竜斗となんて出会わなければよかったよ」