「ちょっと、知里こっち」
竜斗は、うちの手を引いてどこかへ歩きだした。
そして、中庭につくと、そっとうちの手を離した。
「あのさ、俺……ホントは――」
「別にいいの!」
「え……?」
「っていうより、どうでもいいの。もう、竜斗に未練なんてないし」
何を言ってんの?
「たとえ、うちが知らない事があったとしても、もうそれはうちに関係ない」
だから、何言ってんの?
そんな事、これっぽっちも思ってないのに。
「だから、別にいいの。竜斗の事、もうなんとも思ってないから」
まるで、教科書を読んでいるかのように、思っても無いことが、口からスラスラと出てくる。
「だとしても、俺はお前がっ――」
「――いつまで!………いつまで、うちを振り回したら気が済むの!?」
「……振り回す?」