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一体どれくらい時間が経っただろうか。
うちは竜斗の家に来ていた。
だけど、会話はほとんど……いや全くなく、沈黙が流れたままだった。
「知里」
沈黙を破ったのは、竜斗だった。
だけど、いつもの少し高くて、うちを見つめながら言う竜斗の優しい声じゃなかった。
「さっきのさ」
うちと目すら合わせずに、凄く低い冷たい声だった。
「ぃ…わないで」
自然と、うちの口からその言葉が出ていた。
「ごめん…俺さ――」
「いわないでっ!!」
うちは、目から零れ落ちる涙を拭う事も出来ずに言った。
竜斗が言うのを遮るように。
「竜斗がっ……竜斗が例え、うちの事………好きじゃないとしても、うちは別にそんなのいいから!」
「え…」
「だから、言わないでっ」
「ぃや、俺はっ―――おい知里!?」
うちは逃げだした。
竜斗の言葉を聞くのが怖くて……聞きたくないから。
絶対、聞きたくないもん。
“別れよう”って。
その四文字を聞くのが怖かった。