「じゃな。気をつけて帰れよ」


ズキン。


竜斗が歩奈美さんに向けて言ったその言葉に、うちの胸はズキンと傷んだ。


「うん…。じゃ、またね、りゅうくん」


りゅうくん…………か。


歩奈美さんが去った後、竜斗は少し気まずそうにしたけど、すぐにうちに話しだした。


歩奈美さんの事を。



「あいつはな、俺の…その、元カノなんだ」


ズキン。


また、胸が痛んだ。


「そう、なんだ」


そんな事、分かってたけどね。
あの空気。それ以外、考えらんないし。


「うん。じゃ行く?飯」


「あー…ごめん。もう夕日沈んじゃったし、お母さんきっとご飯作っちゃってる。今日は帰るね」


「そっか。ごめんな」


「ううん。うちこそ。じゃね」


それだけ言って、帰ろうとすると竜斗に手首を掴まれた。


「知里、怒ってる?」


あぁ。ダメだな。
頑張って笑ってたのに。
ばれちゃったか。