「な、に言ってんの?
お母さん。オレだよ?
優也だよっ!!」


優也は必死に訴え、お母さんに話し掛けた。


だけど、お母さんは
お父さんお父さんと繰り返し、泣き続けるだけだった。


私は、そんな光景を目の前で見ていたにも関わらず、何もする事が出来なかったんだ。



「あっ!佐恵子さん、いたわよ」


しばらくしてから、ピンクのエプロンを着た人達が何人かお母さんの元へ駆け付けた。


「佐恵子さーん?
また一人で外出たんですか。ダメですよ。
さぁ、帰りましょう?」


佐恵子というのは、お母さんの本名。

そのピンクのエプロンを着た人達は、介護士だと一瞬でわかった。


「嫌よぉー!!
私もお父さんと一緒に行くわぁ!!
助けてぇぇぇーー…
お父さぁーーん」


嫌がるお母さんを無理矢理、優也から引き剥がし
ズルズルと引っ張る。