「どうしたんだよ。
それにいきなり岩波って」

啌君は落ち着いた様子で
静かに言った。


「べ、別に理由なんかないよ?
岩波君でしょ?違った?」

お願い。。。
早く手を離して?

じゃないと私………その優しさに甘えちゃうかも知れないから。

さっき、本当に自覚したばかりのこの想い。


人を好きになった事のない私は、恋の仕方なんて知らないから。


これ以上優しくされたら、私………。




「それはそうだけど………。
けどやっぱお前変だよ。

それにさっき泣いてたし」

やっぱりばれてたんだね…

「変なのはいつもだよ。

それに、そうだとしても岩波君には関係ないでしょ?
私の事はほっといて」



私は下を向いたままそう言うと、啌君は私の腕を掴んでいた手を静かに離した。

ほっとしたと同時に、胸がチクッと痛んだ。


ワガママだね、私。

自分からそうさせたくせに。