授業が終わり、ホームルーム。
先生の話を聞きながら、帰りの支度。
チラっと遼を見ると、いつものように机の上に携帯を置いて、左手で頬杖をつきながら右手で携帯をいじっている。
「こっち見ろ~~!!」って念を送ってみると、パッと目が合ったりする。
今のところ、目が合う率は10勝1敗・・・。
その1敗は遼が寝てた時だったんだけどね。
目が合って、にっこり笑ってくれるとキュンとする。
「じゃぁ、解散!井上!気をつけて帰れよ?」
「はぁーーい!」
先生は毎日あたしにだけ声を掛けてくれる。
「気をつけて」・・っていうのは、何に対して??
車に??道端の石に??それとも・・・・遼に??
「琴女ちゃん、か~えろ♪」
「うん!!」
遼は、いつも先生の話が終わるとすぐに迎えに来てくれる。
教室から出て、あたしは遼の左の袖をちょっと掴みながら少し後ろを歩く。
廊下で横に並んで歩くと、みんなの邪魔になるからなんだけど・・
「「遼、じゃーな♪」」
「バイバーイ♪」
「遼、明日漫画忘れんなよ??」
「りょーーーかーーーい♪」
擦れ違う子みんなが遼に声を掛ける。
遼って女の子だけじゃなくて男の子にも人気があるんだよね。
遼と付き合いだしてから、あたしも色んな男の子に声をかけられるようになった。
「あ!!琴女ちゃん今日はノートありがとね!!また明日ね♪」
「うん!いいよ♪また明日ね♪」
そう言った途端、バフっと遼の背中に顔が当たる。
「りょ、遼!急に止まらないでよ・・」
あたしは鼻をさすりながら言った。
「ねぇ、琴女ちゃん。ノートって何のこと??」
「ノート??」
「さっき言われてたじゃん?今日ノートありがとって。」
「あ・・、板書できなかった所を見せてあげただけだよ?」
「ふーーーん。てか、これからはそういうの禁止にします。」
「へ??なんで??」
「他の男に琴女ちゃんの可愛い字を見られるなんて嫌だし、
琴女ちゃんのノートを汚い手で触って欲しくないからさ♪」
「汚い手って・・そんな・・・」
「男なんて右手で何してるかわかんないんだよ??
まぁ、左手専門もいるけど。
ね?わかった??」
「う、うん・・」
あの、プレイボーイ&女はモノだ的な考えの遼が180度変わった。
校舎を出ると、遼は何も言わずにあたしのバッグを持ってくれて、
そしてそのまま、あたしの右手をギュっと握る。
あたしはこの瞬間がとても好きで、いつも遼の顔を見上げる。
遼もあたしを見下ろしてニッコリと笑う。
あぁ・・・この遼の笑顔をあたしが独占しているなんて・・・
好きすぎて、おかしくなりそ・・・
遼の瞳も、唇も、髪の毛も、手も、声も・・・
ぜんぶをずっと独占していたい・・・
この想い・・・伝われぇーーー!!
あたしは繋いだ手に念を送る。
「クスクス♪琴女ちゃん。俺も琴女ちゃんが大好きだよ♪」
「え?」
「琴女ちゃんの瞳も、唇も、髪も、手も、声も、柔らかい胸も、温かい中も・・・
ぜんぶ俺だけのものだから。」
・・・想いが・・・伝わってる・・・
「さぁて♪今日はどうする?買い物行く?カフェ行く?公園行く?」
「うーーーん。たまには公園がいいかな♪」
「じゃぁ、公園行こうか。」
「うん!!」
「・・・野外PLAYってたまにはいいかもね?」
「へ?!どゆこと?!」
「外でエッチ♪」
「だ、ダメーーーー!!」
あたしは手を振り払おうとするけど、遼は離してくれない。
「絶対、この手は離さないよ♪一生ね?」
遼はニッコリ笑った。
おわり
授業が終わり、ホームルーム。
あたしの神経は背中に集中・・・
先生の話なんて全く耳に入ってこない。
・・《こ》・・《と》・・《め》・・・
・・《が》・・《す》・・《き》・・・
《ことめがすき》
あたしはバッと後ろに振り向く。
碧はニカっと笑う。
あぁ・・もう・・碧サイコーーー!!
帰りのホームルームの時は、必ず碧があたしの背中に文字を書いてきて、
あたしはそれを読み取る。
まわりから見ると、ただのバカップル。
「はい、じゃぁ解散!!」
先生の話が終わると、あたしはすぐに碧の方に身体ごと向く。
「もぉ、碧のせいで先生の話全く聞けなかったじゃんか!!」
「いいのいいの!!琴女は俺だけに集中してればいいんだから♪」
「うぅ・・・」 殺し文句・・・
「さぁて、帰ろうぜ♪今日さ、近くの駄菓子屋いかね?」
「うん!いいよ!!行こう行こう!!」
「今日はふ菓子を50本食ってやる!!」
「じゃぁ、あたしは5円チョコを大人買いしよっと!!」
「おぉ!!やるな、琴女!!」
《お前らは小学生かっっ!?》
クラス中がそう思ってるんだろうけど、誰もあたしたちバカップルにそう言う子はいない。
教室を出て、俗に言うエッチ繋ぎで廊下を歩く。
「「碧~!!またなぁ!!」」
「おぅ!バイブー♪」
「碧!!さっき借りたPSP明日までOK?」
「おーぅ!問題なし!」
碧って、ホント友達多いなぁ。
人柄なんだろうなぁ。いつも碧のまわりには人が集まるもんね。
校舎を出て、碧は自転車置き場に自転車を取りに行く。
「お待たせ♪」
「あれ?今日自転車違うじゃん?」
「あぁ、あのベンツは今日姉ちゃんが乗っていったからさ。
だから、今日はフェラーリ♪」
「・・マジ?!乗り心地よさそ♪」
「だろ?」
碧は得意げな顔をする。
・・・ベンツも、フェラーリも普通のママチャリなんだけどね。
「んじゃ、行こうぜ♪」
「うん!」
あたしは碧の後ろに座った。
「ちゃんと掴まっとけよ?」
碧はそう言って、自転車をこぐ。
あたしは遠慮気味に碧のシャツをキュッと掴む。
・・・あぁ・・・コレ。
よくドラマとかであるやつ。
彼氏の自転車に二人乗り・・・
THE 青春・・・って感じ。
碧ってこんなに背中広かったっけ?
細いのにこんなに筋肉質だったっけ?
あたしはそっと碧の背中に顔をくっつけて、壁のウエストに腕をまわした。
・・・しあわせ・・・・
駄菓子屋に到着。
この駄菓子屋は、付き合いだして間もない頃に碧に連れて来てもらったお店で、碧が幼稚園の頃からあるらしい。
今時、まだこんな駄菓子屋ってあるんだぁ♪って感動したのをよく覚えてる。
あたしたちはお目当ての物を購入して、お店の前でラムネを飲む。
最近、やっとラムネも上手に飲めるようになってきた♪
ふと、お店の中にいる小学生に目をやると、とてもやんちゃそうな子が駄菓子屋のおばあさんと楽しそうに話をしていた。
・・・碧もきっとあんな感じだったんだろうなぁ・・・
なんだか心が温かくなった。
・・・碧とずっと一緒にいれたらいいなぁ・・・
そしたら、子供とまたこの駄菓子屋に通えるし・・・
きっと・・・しあわせな毎日なんだろうなぁ。
「あぁぁぁ!!当たった!!!!」
あたしが妄想に浸ってると、隣で碧が叫んだ。
「ガム当たった!!!」
そう言って、当たりと書かれた紙を見せてくる。
「俺、超ラッキーだし♪交換してこよっと♪」
碧、可愛い♪ホント子供みたい・・・
碧は当たりくじを持っておばあさんの元に行き、ガムをもう1個もらって、それをさっきのやんちゃそうな子にあげていた。
「ガムあげたの?」
「おぅ!アイツ、毎日おばあちゃんの話し相手になってるからさ♪ご褒美♪」
碧は嬉しそうな顔をして言う。
・・・碧ってホントに優しいんだなぁ。ますます好きになったよ。
「ずっと・・・碧と一緒にいたいな・・・」
あたしは思わず声に出していた。
「おいおい、いきなりプロポーズか♪」
碧はニヤっと笑う。
「ホントにそう思うんだもん・・・」
碧は、あたしの手からラムネのビンを取り上げて、ギュっと手を握った。
「うん。俺も。いつもココに琴女とくると、なんかわかんねぇけど、琴女との未来が見える気がするんだよなぁ。
琴女と俺たちの子供と一緒にこの店に来るイメージが綺麗に見えるって言うか・・」
「ホント??」
「マジ♪ちなみに子供は7人♪」
「ちょっと、多すぎない??」
「俺ならイケル♪」
「その未来のあたし、やつれてない?大丈夫?」
「大丈夫。琴女はいつまでも可愛いまんまだし♪」
「それならよかった♪」
「琴女。ホントに・・ホントにホントにホントにホントに俺とずっと一緒にいてくれる?」
碧が急に真剣な顔で言う。
あたしは躊躇うことなく答えた。
「ずっと一緒にいるよ。家族みんなでこの駄菓子屋通いたいもん!!」
「だな♪」
あたしたちはお互いの手をギュっと握った。
「・・じゃぁ。まずは・・・子作りの練習しておくか♪俺ん家行くぞ?」
「・・ホントに子供7人とか・・・有り得るかも・・・」
おわり
授業が終わりホームルーム。
あたしは明日の連絡事項のメモを取る。
「んじゃ、解散!!」
先生がそう言うと、クラス中がいっせいに動き出す。
・・だけど、全く動かない人がただ一人・・・
「オサム?もうホームルーム終わったよ?」
あたしは机に突っ伏してねているオサムの肩を揺する。
「んぁ?あぁ・・・」
いつもそう言葉を発してから30分は動かない・・・
「琴女ちゃん、じゃーねぇ♪」
「うん!バイバイ♪」
「バイバイ、琴女ちゃん♪」
「バイバーイ♪」
あたしはみんなを見送る。
気がつけばいつも教室にはあたしとオサムが残っている。
「オサム?そろそろ帰ろっか?」
「・・・あぁ・・・」
・・・アレ・・・?
今日はなかなか起きない・・・
「オサム?あたし帰るよ?もう知らないよ?」
そう耳元で言って、立ち上がろうとすると、いきなりガシっと腕を掴まれる。
「・・この俺を置いていくつもり?」
「起きてるなら早く帰ろうよ!!」
「・・・キス」
「へ??」
「キスしたら起きてやる」
・・・オサムって時々訳わからないこと言い出すんだよね・・・
「早くしろ・・・」
あたしの腕を掴む手に力が入る。
「わ、わかったから!!手離して?」
オサムは手を離して、ガバっと起き上がる。
あたしは、教室の外に人がいないか耳だけで確認して、そっとオサムの顔を手で包んだ。
ちゅっ♪
唇を離そうとした瞬間、あたしの後頭部はホールドされ、そのまま深いキスをされる。
「んんんっっ!!」
突然の事で息継ぎも出来ない。
「お・・・さ・・・む・・くる・・し・・ぃ」
キスの合間にHELP出すけど、無視。
「・・うぅ・・ぐる・・しぃ・・」
その瞬間、唇は離れた。
「も、もぉ!オサム苦しいじゃん!!」
「バカか?お前。鼻で息しろよ。」
オサムはクククッと笑う。
「あ・・そっか・・」