「志貴子…」
「…帝……」
帝は目を見張った。
病を患っていた志貴子が、かなり衰弱していたからだ。
現在、志貴子の腹には赤子が宿っており、それも関わっている。
「志貴子。大丈夫か?何か欲しいものは…」
「帝。私は、大丈夫です」
「志貴子…志貴子。あぁ…志貴子、凛子が…い…賀茂神社に…お前のために、祈りに行く」
「凛子、が…私の…ために」
「あぁ」
帝は咄嗟に嘘をついた。この件は、内密なのだから。
「明後日…出立だ」
「………そうです、か」
静かに、志貴子は目を伏せた。
「志貴「帝。凛子に…ありがとう、と、お伝え下さい。そして、ごめんなさい、とも」
「何故…」
「凛子には…たくさん、寂しい思いをさせました。ですから…」
すると、地震が起きた。
数秒かけて収まる。
「わかった。凛子に伝えよう」
「ありがとう、ございます」
帝は一つ頷き、御簾をくぐった。