「おい、どういう事だ」
「忠直様」
「地震はおさまらず、雨もこの四ヶ月、降り続いている」
「はい」
「太陽神は、いっこうにお姿を我々にお見せにならない」

天津見宮の西ノ宮で、上社 忠直と下社 守直は話し合っていた。

「昔はこれしきの問題など…すぐに解決していたと言うのに」
「このような事になったのは…あの娘が、物忌となってからではないですか?」

あの娘とは、神無の事。

「そうだ。あの名ばかりの、何の役にも立たない物忌が…」

鼻で笑いながら、忠直は言う。

「役に立たないのなら、捨てれば良い」
「忠直?」
「確か…都には、御歳五つの姫宮様がおられる」
「……!その姫宮様を…!!」
「物忌に仕立てるのだ、守直よ」
「はっ!」

雨音が響く西ノ宮で、二人はクックッと嗤った。

「あの物忌がいるから、玉依姫の御力は薄れる」
「あの物忌さえいなければ…!!」