カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン


誰かが石段を下りる。
そしてそれは、神無の後ろで止まった。

「神無様」
『……勒天か』
「はい」
『どうした』
「京の都にて…地震が、生じているとの報せが」

振り返る事もなく、神無は応じる。

『そうか』
「はい。あの、………………キャッ」

突如、地鳴りが発生する。
数秒続いて、やっとそれはおさまった。

神無は目を細めて三柱鳥居を見上げる。

『玉依姫の祈りは、もはや届いていない』

ハッとしたように勒天が顔を上げた。

「神無様?」
『勒天、知っているか?』

神無はゆっくりと身体を移動させ、勒天と向き合うかたちとなる。
勒天を見据え、言った。

『玉依姫を殺せば、神としての器が砕け、人間の器として、輪廻できるということを』
「神無様、」
『殺さなければ、骸も無くこの世から消え失せる』
           クニノトコタチノカミ
地震が都で起こるのは、国之常立神が怒り狂っているから。
ならば、玉依姫は祈り、怒りを鎮めなければならない。しかし、肝心の玉依姫の力が薄れてきている…。


ならば、玉依姫の代わりとなる者を。

『妾では、無理だ』

罪の子と言われている自分に、玉依姫はできない。

『誰か、代わりの者を』

神の器に合うような、童女は。

『たしか、都には』

齢五の――――――――――――…

『帝の娘がいたはず』