あれから十年が立ち… 幼かった神無は、齢十六になっていた。 祭壇に掲げられた篝火が、風に煽られ静かに揺れる。神無は、祭壇の中央に端座し、目を閉じてひたすら祈る玉依姫を、身じろぎせずに見ていた。 ざざ。ざざ。 ざざ。ざざ。 鼓膜を震わすのは、崖縁の真下に臨む海の波音だけ。そこから運ばれてくる潮風が、玉依姫と神無の髪を靡かせていた。