「はあ…あ…ねむ…」



椅子の動く音。



大きな欠伸と、大きな背伸び。



恭治が眠たそうに細い目を開ける。




「あ…?なに、この空気。」



恭治が周りを見回して、また欠伸をひとつ。



まあ、起きてこれはそうなるだろうけどさ。




ちょお、空気読め!って。




「…ハッ…」



呆れたように恭治を見ていたら、俺の隣から乾いた息の漏れるような笑いが聞こえた。



慎也の肩が上下する。



喉をククッと音鳴らして、トレードマークである金髪をかき揚ける。




「ハハ…あー…あ。マジかよ」



顔をあげた慎也の頬は、ほんのりと赤くなっていた。




情けなさそうに眉を下げて、切なそうにまた乾いた笑いをする。




「完敗」



その一言をいうと、慎也は自分の机に戻ると鞄だけを手にとって出て行った。