ようやく僕を追う足音が途絶えた。

でもまだ安心は出来ない。

僕は逃げなければ。
とにかく逃げることだけを考えなくては。


見つかってはならない。

誰から逃げているのか。

そんなのどうだっていい。

怖い。

どうすれば?

恐い。

助けてくれ。

助けてくれ。
誰か僕を助けてくれ。




荒い息を整えもせず、僕は縋り付くように、ふと目に留まった近くのぴかぴかの家のドアを叩いた。


「はい、どなたかしら?」



僕は右手を振り上げて絶叫する。

「助けてくれ」




(終)