「やぁだぁ……っ!私が取りに行くのぉっ!」


 末っ子だからと子供扱いされるのが嫌だったのか、ノンちゃんが泣き出しそうな声で叫びます。


「わかった、わかった。じゃあノンちゃんが取ってきて?」

「グスッ、ずずっ……うんっ!」


 涙が零れそうになっていた目元を腕で拭い、ノンちゃんは大きくうなずきました。

 浅くて流れのゆるい川の中を1歩、また1歩とノンちゃんは歩き出します。

 小さな身体をしたノンちゃんの、とても大きな挑戦です。

 もうすこし。

 もうすこし……。

 そしてついに、無事に枝に引っ掛かったボールのところまで、ノンちゃんは歩ききりました。

 ボールを持ち上げようとノンちゃんは両手に力を入れますが、重いらしくて持ち上がってはくれません。


「重いボールなんて、初めてかも……」


 けれど、ここでみっちゃんやマーくんに手伝ってももらったら、ここまでやってきたことが無意味になってしまいます。

 ノンちゃんは必死に持ち上げようとして――ついに。


「う……んしょっ!」


 持ち上げることが出来ました。