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 夜。気分を紛らわせようと美也は浴室へ向かい、お風呂に肩まで浸かる。


「ふぅー……」


(明日、警察に言おう。やっぱり隼人に迷惑かけたくないし、このままじゃいけないと思うし……なにより、私が怖い)

(……あ、新しい種類のシャンプーを買ったんだっけ。隼人の好きな薔薇の香り……隼人、喜んでくれるよね)


 ジィーーーー。


「?!」


 なにやら視線を感じ、辺りを見渡す。

 すると、窓に人影が映っているのが見えた。けれど窓は曇りガラスで、それがだれなのかはわからない。

 背は大きくて、体格からして男性……その人物は確実に、美也の入浴シーンが目的でそこに立っていた。


「きゃあぁぁぁっ!!!」


 美也が悲鳴を上げるとその人物は窓から消える。けれども、美也はお構いなしに浴室から出て、タオルを身体に巻いたまま携帯を手にする。


「もっ、もしもし、隼人?!」

「ん?美也か?どうした?」


 美也は隼人に電話をかけていた。


「お風呂に入っていたんだけど、だっ誰かが、窓から覗いてて……とにかく来て!」

「おう!今から行くから待ってろ!」


『あはははっ、そいつはキミを助けてなんかくれないよ』


 ……今朝の手紙を思い出す。

 隼人はちゃんと守って、私を助けてくれる。今だって私の家に来るって言ってたもの。何が『助けてなんかくれない』よ。ふざけないでよ、要!