『なんでって…。好きだから好きって伝えたいでしょ?俺の方に少しでも向いてほしいから。』
蒼山の横顔がちょっと寂しく見えた。
…ごめん、蒼山。
私は…、
「蒼山、私ね…『それ以上は聞かないよ。』
「…え?」
蒼山は私の真正面に立った。
その顔は少し切なくて、でも優しく笑っていた。
『俺はまだ奈央ちゃんのこと諦めてないから。』
そう言って蒼山は教室から出て行こうと、私に背を向けた。
蒼山は後ろを向いたまま、
『奈央ちゃんに、好きな人がいても…ね。』
そう言った。
…蒼山、私なんかより良い女の子はいっぱいいるんだよ?
「蒼山…ありがと。」
蒼山のおかげで、自分の気持ちに気づけたよ。
蓮が女の子と話して苦しくなったり、蓮と話しててドキドキしたりする理由。
それと、蒼山の気持ちには答えられないけど…
私も、蒼山のこと好きだよ?
あんたは良い奴だよ…。
私は…
ドアの直前でこっちに振り返った蒼山は、
『ほらっ。奈央ちゃんは笑ってる方が可愛いよ♪泣いてる顔も十分可愛いけどねー♪』
そう言って、手を振りながら教室を出ていった。
本当にありがとう、蒼山。
私は…、
蓮が好きなんだ。
あーーもーー!
まぢでむかつくー!!!
何がって?
んなもん決まってんだろ!
蒼山渚とかゆう男だよ!
奈央にベタベタくっつきやがってよぉ…
奈央も奈央で否定しないからいけねーんだよ!
まあ、あいつがそうゆうの気にしないのは俺が一番知ってんだけど。
そんな奈央だから好きになったんだ。
それにしてもくっつきすぎ!
しかもあいつ喧嘩売ってきやがった。
『奈央ちゃんは俺のものになるから。』
とか言いやがってー!
ならねーよ馬鹿野郎!
なるわけねぇじゃん…。
奈央は俺のもんだ。
はぁはぁはあ…
ちょっと乱れすぎたか…。
『何やってんの蓮ー』
興奮状態の俺のもとにやってきたのは、翔だ。
久しぶりの登場じゃね?
『別に…何もねーよ。』
『…ふーん。逢坂が蒼山と仲良いからヤキモチやいてんだなー』
『なッッ////!』
翔はニヤニヤしながら俺を見ている。
…こいつもむかつく。
まあ事実なんだけど。
『そいえばさっき逢坂見かけたぞ。』
っ、それを早く言えっつーの!
『どこでだよ』
『1組の教室の前。』
よし、行くか。
俺は翔に背を向けて、1組の教室に向かおうとした…ら、
『逢坂、日向榛名とか言う奴と楽しそうに話してたぞー』
ちょっと楽しそうに翔が言った。
は?
日向榛名って…
こいつもイケメンとか言って騒がれてるやつじゃねーか。
そーいえば何回か奈央が日向と話してるとこ見たことあるな…
んだよ…
奈央も少しは自覚しろよ…
翔はほっといて、俺は教室を出た。
1組の教室は運悪く階が違う。
一段飛ばしで階段を上がると、奈央の姿が見えた。
日向なんかどーでもいい。
奈央のところに行こうとしたときだった。
『桐山くんっ』
後ろから声をかけられた。
誰だー?
後ろを見てみると、同じクラスの泉ちゃんが立っていた。
あ、ちなみに泉は苗字だから!
翔が泉ちゃんって呼んでるから、俺も泉ちゃんになったって呼ぶようになった。
名前で呼ぶのは奈央だけだ。
んなの、あたりめーだろ。
『泉ちゃん、どーした?』
泉ちゃんも奈央と同じように、俺に普通に話しかける。
泉ちゃんはただの友達だけどな。普通に良い子だ。
『これ、前に桐山くんが好きだって言ってた人のCD。貸す約束したでしょ?』
泉ちゃんに手渡された袋の中には2、3枚のCDが入っていた。
『おお!さんきゅーな!』
俺は泉ちゃんと話しながら1組の教室に近づいていった。