「私はメリルちゃんじゃないから。逢坂奈央、健全なる女子高生」
私の話に眉を潜めた3人組。
現実を受け止めやがれ。
『嘘だ。』
「はあッッ?」
初めて口を開いた、カメラ君。
と思ったら、
パシャッ…
写真を撮られた。
『君は、メリルちゃんだ。恥ずかしいだけなんだろう?』
一番危ないのは、カメラ君みたいだ。
「だーかーらー!私はメリルちゃんじゃない…―――」
私が言い終わる前に、カメラ君は私のカチューシャを取った。
『一枚、一枚、洋服を脱がせてあげる。抵抗なんて…出来なくなるよ。』
「…何言ってんの?」
無理だからねっ?
私、幼児体型だし。
って、問題そこじゃない?
ごめんごめん。
カメラ君は首の後ろで結んでいる、フリフリのエプロンの紐をほどいた。
「ちょ、やめてよ!」
パシャッ…
また撮られた。
私の体を隠すのは、水色の布生地だけになってしまった。
この雰囲気、私でも怖いっつーの。
そしてカメラ君が後ろについてるチャックを下げようとしたとき…
「き、り…やま…」
もー、駄目じゃん。
「きりや、ま…」
諦めて目を瞑ったときだった。
バアンッッ!!!!
男子トイレの扉が開いた。
てか…壊れた。
その音にびくっとする3人組。
ゆっくり目を開けると…
「桐山…?」
肩を上下に揺らしている、
桐山が立っていた。
私、無意識に桐山の名前呼んでたよね…?
なんか桐山、ヒーローみたいじゃん。
『てめぇら何やってんだよ』
いつもより、声にドスの効いている桐山。
『え、いや、あの、』
テンパってるカメラ君。
『とりあえずそのきたねえ手、離せよ。』
桐山は眼鏡君とぽっちゃり君を睨んだ。
二人は桐山に脅えて、私の腕を離した。
はあ…やっと自由だ。
『お前ら、奈央に何した』
『え、いや、あの、』
またまたテンパってる3人組。
『何したって聞いてんだよ!』
急に桐山の声が大きくなるもんだから、私もびくっとしてしまった。
『…写真、撮りました』
『はあ?』
桐山はカメラ君からカメラを奪い取った。
多分桐山が見たのは、エプロンを脱がされたときの写真だろう。
『てめぇ…』
…やばいよね?!
桐山、絶対殴っちゃうよね?!
…私の予想通り、桐山はカメラ君に殴りかかろうとした。
「桐山ッッ!駄目ッッ!」
私は桐山に抱きついた。
『何でだよ!こいつら、お前に襲いかかろうとしたんだぞ!』
そんなん分かってるよ。
でも…
「桐山がこいつら殴って、問題になったら意味ないじゃん…」
『奈央…』
桐山はゆっくりと私の頭の上に手を置いた。
…良かった、止められた…。
「あんたたち!」
『『『はぃぃッッ』』』
私の声にびくっとする3人組。
「もう、こんなことしないって約束して?」
3人組は小さな声で"はい"と言って、私に謝った。
悪いことってわかってんなら、やるんじゃないの!
「それとー」
私はカメラ君に撮られた写真を
消去した。
これで悪用はされないでしょー。
「もう学校から出ていってよ?めんどくさいことにはしないからさ。」
私が言うと、3人組は怯えながら
トイレから出ていった。
…やっと終わったあ。
「桐山、ありがと」
私は桐山の頭をくしゃくしゃに撫でた。
助かったのは、桐山のおかげだ。