そして、向かい合う女性。


その手には、生まれて、間もない赤子を抱えている。

「もう少し…もう少しですから…」


「少しの間だけ、静かにしていて下さいね…」

穏やかだが、赤子に言い聞かせるような口調の女性…


そして「グォーグルル」
と今にも飛びつきそうな、勢いで唸り声を上げる魔獣ケルオ…


両者睨み合う。

そして、次の瞬間っ…

ケルオは女性に飛びかかる。

女性は先ほどから、何らかの呪文を唱えていた。
「空に浮かびし怒鬼よっ！」
すると、何故か雲行きが怪しくなりだしたっ。

次の瞬間は、瞬きをする間もなく、終わった。

ケルオは「ガァッ」と女性に噛みつこうとしていたが、そろより早く女性は叫びを上げたのだった。

「召還っ！黒雲雷神」

その途端、女性の頭上には、いつの間にか黒雲が広がり、１筋の黄色い光が落ちて来たのだった。

「キャンッ」

叫んだのは、先ほどまで、女性に噛みつこうと飛び跳ねていた、魔獣ケルオだった。

「さぁ、これでもう安全です。行きますよっ」(笑)

優し赤子に微笑んだ女性はまた、道を走り出したのだった。


頑張って、頑張ってと何度も、何度も言いながら、どこかに迎う女性と赤子。