「怖いんだ。香と女神を同一視するのが。」
「いいじゃない、それでも。」
「えっ。」
連の考えていた答えと違い少し動揺する。
「素敵じゃない、自分の恋人が女神だなんて。」
考え込む表情を浮かべ二階の自分の部屋に向かった。扉を開け、壁のスイッチを押
し、蛍光灯に明かりが灯った。連は、ベッドに座り寝転び、両腕を頭の後ろにもって
いき、天井を見た。
「素直って何だろうな……。」
そして朝を迎えた。連は、いつの間にか眠っていた。翌朝。連は一階に降りた。キッ
チンには、頭にバスタオルを巻いた母が朝食を作っている。連の家では朝、といって
も早朝に風呂に入る。連も風呂に向かう。
「あれ?今日は行かないの?」
「行かない。行っても、感傷にひたるだけだから…。」
「そう…。」
母は少し寂しい気がした。連が、あの日以来あの場所に行くのは当たり前だと思って
いたから。連は、着替え、髪をバスタオルで拭きながらリビングの椅子に座った。
テーブルの上には、母特製のサンドイッチが置かれている。連は、それを頬張る。そ
の時には、母は棚の上に置いてある鞄を右肩にかけていた。そして玄関に向かった。
「じゃあ、行ってくるね。」