香は、何かを思い出したように、沈黙を破った。
「この世界には、クリスマスっていう日があるの?」
連は、笑いながらうつむいた。
「どうしたの?」
「いや、クリスマスなんて、あの日以来、考えた事がなかったからさ。」
「やっぱりね。」
「今度はクリスマスにでも来るのか?」
「その通り!」
香は嬉しそうに言った。連は、最初の質問に今、答えた。
「二十四日が、クリスマス・イヴ。二十五日がクリスマス。」
「ありがと。」
素っ気無く言った。再び、沈黙が二人を包んだ。
「あの…。」「あのさ…。」二人は同じタイミングで言った。
「あの場所に行かないか?」
香は、無言でうなずいた。連は、購入した本をテーブルの上に置き、玄関へと向かっ
た。香は、その後を追う。そして、朝と同じ道を二人で歩く。道中、二人は、何も話
さなかった。連の歩みが止まった。いつもの場所、あの場所とは、天少学院の正門
だった。香も、考えは一緒だったらしく、落ち着いている。
「この場所だったよな。初めて女神と話をしたの。」
「そうだね…。」
静かに言った。
「それから、この道を真っ直ぐ、人気の無い所に行ったんだよね。」