朝、履いていた靴とは違
う靴を玄関の棚の中から取り出し、その靴を履き、扉を開け、外に出た。ストーブの
灯油臭さがなくなり、冷たい空気が広がる。
「相変わらず、寒いな。」
そう呟き、自転車にまたがり、朝歩いた道を行く。いつもの場所を通り、本屋へと向
かった。朝とは違い、沢山の人が擦れ違っている。そして、書店に着く。書店の名は
「冬模様」連は、店名に惹かれここに来ている。連は推理小説の所へ向かう。連は、
しばらく立読みをして、その本を購入した。来た道を戻り、家に着いた。扉を開ける
と、覚えのある香水の香りがした。まさか…、連は心の中で呟く。靴も揃えず、早足
でリビングに向かう。
連の目に飛び込んできたのは、白いヘッドホンをした香の姿だった。香は、連の気配
に気づき、こちらを見た。
「あっ、連、お帰り。」
そして香はヘッドホンを頭から外す。
「いつ、こっちに来たんだ?」
「えーっと、さっきかな。」
香は、左手の人差し指を下唇にあて、天井を見ながら言った。
「誰もいなかったから、家を間違えたんじゃないかと思ったけど、連が入って来て、
ホッとした。」
「やっと一年経ったんだなって今、思ったよ。」
しばらく、沈黙が二人を包んだ。
「えーっと、そうだ!」