「私の気持ちは、変わってないよ。」
二人は、駅を少し抜けた、滅多に人の通らない道を歩く。そこから、連の家へ向か
う。真っ直ぐ行けば、十五分程で家に着ける。
「約束…。」
「約…束…?」
連は思い出したように言い、香は、忘れていた。
「雪の花…、雪の花を見せるよ。」
「本当!?」
香は思い出したように言った。
「確かさ…女神って視力が顕微鏡以上にあるんだよな。」
「そうだけど…。」
この事は、去年、本人から聞いたものだった。聴覚、視覚、嗅覚がとても優れている
らしい。降っている雪を見つめ、右の手袋の上に、雪を乗せる連。それを香の目線上
に持っていく。
「うわ~、すごい、花の形してる。」
香は、雪の花を右手で摘んで左手に乗せようとしたが、花は、少しの水になってい
た。しかし、雪の花は無数に降り注いでいる。今の香には、雪は花にしか見えない。
そして二人は再び歩きはじめた。香は、目を輝かせて、雪を見ている。
「そろそろだな。」
「そうだね。」
二人が話しだす時、雪が止みはじめていた。雪は、積もる程降ってはいなかった。唯
一、積もっているといえるのは、道の両端だけだった。