二センチ程
の雪の厚さに、コンクリートの黒色が線にも見える。そして、日が昇り始めた。二人
は、足跡を辿り、家に戻った。家の中に入ると誰もいない。どうやら、母は、ここか
ら四駅程離れたショッピングモールに行くと手紙がテーブルの上に置かれていた。二
人分のサンドイッチも置かれている。香は、椅子に座り、連はキッチンで水の入った
やかんを火にかけ、香の左隣に座った。香はサンドイッチを口にした。
「美味しい!!」
連は当たり前のような表情で、それを食べている。そしてやかんの水が沸騰してい
る。連はキッチンへ向かい、沢山あるティーパックの中からお気に入りのスリランカ
産を二つ探して、カップに入れ、湯を注いだ。香にも、連のお気に入りを知ってもら
いたかった。連は二つのカップを両手に持ち、テーブルの上に置いた。
「この香りは、スリランカ産だね。」
香は、上機嫌で言った。
「女神にも分かるんだな。」
連は少し驚いた。
「こっちの世界に来て初めて飲んだ紅茶なんだ。」
「そうか…。」
連は二つの皿を持ちキッチンへ持って行く。
「ねぇ、また行かない?大きな木の下へ。」
香は紅茶を啜り、そう言った。