悟と私は何も言わず、ずっと互いの目を見てた。

ドキドキ

悟は少し切なそうな目をしてた。
その目は私の胸の鼓動をよりいっそう高める。

ドキドキ


悟…どうしたの?
その一言が喉まできてるのに、言葉にできない。




「…夏美。これ…」


-プルル プルル-


私と悟は同時に音の鳴る方を見た。

私の携帯だった。


「ぁっ…ご、ごめん。ちょっと待ってね…」

「ぉ、おう…」


私は自分の携帯を慌てて開いた。
画面を見ると、化粧室にいるメグからだった。部署カラ化粧室は近いのにわざわざかけてくるなんて…、面倒がりなメグらしい。
少しホッとしながら通話ボタンを押した。

「もしもしメグ?どうしたの?」

『夏美ー…?今日健司のお店予約がいっぱいだから席空いてないんだってぇー…。だからジニー無理っぽぃ…』

「ぇ!?そうなの?残念…。久しぶりに健司サンに会えると思ったんだけどな…。じゃあ場所どうしよっか。」

『とりあえず化粧直しする意味無くなったカラ部署に戻るー…。ぁ、山田は?』

「山田クンなんか用があるとかで、直接現地集合するとか言っていなくなっちゃったよ?」

『アイツ勝手な事しやがって…。わかった。山田に今ァタシから電話するわ。』

「うん。お願いネ。…ぅん。ハーィ…」



少し息を吐いて携帯を閉じる。


「どうした?」

「ぁっ…なんか、今日健司サンのお店忙しいみたいで無理になっちゃったみたい…」

「マジかぁ…。俺も健司サンに会えるの楽しみだったんだケドな。」


お互いさっきの事は忘れてしまっていた。


「どっか近場で無いかなぁ…。」

「ぁ、そういえば会社の通りに新しくできた居酒屋あったぞ?」

「本当にッ??じゃぁそこにしよう☆決定☆ そうと決まったら早速メグにメールで知らせておこうっと」
自分の携帯を開き、メグにメールを打つ。
すると隣から笑い声がした。

「ハハ。その即断即決ぶり相変わらずだな。」

「それって単純って言いたいのー??」

悟を少し睨んでみた。


「アハハ。褒めてるんだよ。…夏美の一直線で迷いの無い所が好きだったから」