すると、私がお札を握る手を、誰かに掴まれた。

振り向けば、寝癖のついたままの、ジャージ姿の樹。



「何ですか、先生」



私は樹を見上げた。



「この金はどうした」



「バイトで貯めたお金ですけど」



私は左手でお札を取り、優太に握らせた。

少しシワの出来たピン札だったお金。

優太に「しまいな」と言うと、更に手を強く掴まれた。



「い…、痛い…っ!;;」



私は腕を振り、樹から手を離させた。



「こんな大金、優太に何に使わせるんだ?」



「優太の旅費ですよ」



赤くなった部分を擦りながら答える。