その先には

沙織の両親の姿が

あった。



祐二も立ち上がり

美咲の後を追った。



「おばあちゃん、
おじいちゃん」



走り寄る美咲を

義母はしゃがみ込んで

迎える。



「美咲ちゃん。
また大きくなってぇ。
元気にしてた?」



「うん」



祐二は追いつくと

義父に頭を下げた。



「ご無沙汰しております。
お変わりありませんか?」



「私達は相変わらずだよ。
2人とも元気そうで
なにより」



義父は美咲の

頭を撫でた。



「義母さん、
すみません。
あまり美咲の顔を
見せに行けなくて…」



「とんでもない。
1人で全部してるん
だから、大変なのは
わかってますよ」



「ほんとになぁ。
祐二くんはよく
やってるよ。
私だったら
自分の事すら
まともにできない
だろうな」



「ほんとですね」



2人は顔を見合わせて

笑った。



和やかな老夫婦の姿に、

複雑な想いが

祐二の胸を満たしていく…



あんな事故がなければ

自分たちも…



男手一つで娘を

育てる中、

祐二は妻への想いを

封じ込めていた。



いや…



それどころでは無かった…

と言った方が正しいかも

しれない。



もし美咲がいなければ、

きっと祐二は生ける屍と

なっていただろう。



忙しい日々に追われ、

妻のことを思い出す

時間がだんだん減って

いった…



しかし、

それが祐二にとって

唯一の救いだったかも

しれない。



「パパー、
おじいちゃん、
おばあちゃん、
はやくー」



美咲は墓の方へ

少し走ると、

振り返り大きく

手を振った。