まだ残暑厳しい

9月の初旬。



手塚祐二は

妻、手塚沙織の眠る

墓地に来ていた。



もちろん、

娘の美咲も一緒に。



沙織が亡くなったのは、

ちょうど二年前。

不慮の事故によるもの

だった。



三回忌は沙織の両親と

祐二達の4人で

行うため、

両親の到着を待っていた。



「おばあちゃんと
おじいちゃん
おそいねぇー」



美咲は缶ジュース

片手にうろうろと

歩いている。



「美咲、
ちゃんと座って飲みなさい」



シングルファーザーも

2年間でだいぶん

いたについてきた。



「はぁい…」



沙織が亡くなったのは、

美咲がまだ2才に

なったばかりの頃だった。



沙織の死は

幼い美咲にとって

とてつもない悲劇だった。



今はある程度

理解しているが、

当時は大人の

言っている事を

十分に理解できて

いなかった。

それが余計に

痛々しかった。



「パパものむ?」



美咲は祐二の口元に

缶を持っていった。



「ありがとう」


「おいしい?」


「うん、おいしいよー」



祐二が微笑むと、

美咲は満面の笑みで

自分も飲んだ。



この美咲の

天使の笑顔が、

祐二をいつも励まして

くれる。



馴れない家事に

経験の無い子育て。



もちろん仕事だって

手を抜けない。



そんな状況の中で

今までやってこれたのは、

美咲の笑顔が

あったからだ。



「あーっ」



美咲は声を上げると、

缶を置き走り出した。