「この部屋のものは私とお義母さまで揃えたの。足りないものや不便なことがあったら何でも言ってね」


こんなに至れり尽くせりで、これ以上何を望むことがあるのだろう。

その言葉には恐縮するしかなかった。


「私と嘉人さんの部屋はここを真っ直ぐいった突き当たりの角の部屋だから、何かあったらいつでも来てね」


そう言って、叔母は部屋を出ていった。



なんだか気が抜けてベッドに腰かけると、柔らかなマットレスが私の体を受け止めてくれた。

天蓋にばかり注目していて気がつかなかったけれど、よく見たらこのベッドはクイーンサイズだ。

私ひとりで眠るには広すぎる。


この部屋も。

たぶん、この一室だけで高橋家のリビング、ダイニング、キッチンを合わせたくらいの広さだと思う。

自分以外誰もいない空間が、妙に寂しく感じた。


ひとりなんて、慣れているのに。