「それに、きみも参加してほしいんだ」

「え?」


思わず、その瞳を凝視してしまう。


「長谷川家の人間として、出席してほしいんだよ」


それは、“高橋亜美”としての私を否定するような言葉のように聞こえた。

やっぱりこの家の人間は、私を長谷川家の血を引くものとして、長谷川家の直系の後継者としてしか見てくれていないのだろうかと、急に不安に襲われる。


「いや、そうじゃないんだ」


まるで私の心の中を読み取ったかのように、否定の言葉をかけてくる叔父に、疑念のこもった視線を投げかける。


「こういう世界ではそれぞれの家にタブーがあり、それをみんな知っていて、それでもお互い知らない振りをするのがマナーになっている部分がある。例えが悪いけど、近親婚や裏社会とのつながりなんかがそうだ。
そして、うちにとってのタブーが、兄さんの存在だった。名家の長男が家を捨てたなんてきっと外聞が悪いだろうと、まわりが勝手にタブー視していただけのことだけどね」



父の存在が、長谷川家の禁忌。

そうして見られることをこの家みずからが望んだことではないにしても、その事実は重かった。