甘酸っぱい苺のタルトは私が今まで口にしたどんなケーキよりも美味しかった。

クリスマスに沙世と作ったケーキはまた別だけれど。


そもそもあまり繊細ではない私の舌は、たいていのものは美味しいと判断してしまう。

けれど、それを差し引いてもタルトの食感や苺の風味が最高に最上級で、自然と笑顔になってしまっていた。



「そんなに幸せそうに食べてもらえたら、作りがいがあると思うわ。楽しみにしていてね。食べられないものはある?」

「いえ、好き嫌いはないので」


ケーキの味を邪魔しない、シンプルなミルクティーの入ったティーカップを持ち上げながら言った。

可愛らしい薄い桃色の花の絵が描かれているこのティーカップも、きっと一セットで私の想像もつかないような値段なのだと思う。


あまりそういう俗的なことは考えたくないけれど、これだけ高級品が溢れていれば考えてしまっても仕方ない。

今までそういうものに触れたことなどなかったのだから。