「それはないわ。お義母さま、あの時あなたに失礼をしてしまったこと、すごく気にしていて。でも今日こうやって来てくれることを知って、とても喜んでいたもの。
もしかしたらあなたと、お義兄さまを重ねて見てしまうかもしれないけれど、それはあなたを見ていないのではなくて、お義兄さまにしてあげられなかったことを少しでもあなたにしてあげたい・・・・罪滅ぼしのようなものだから」


罪滅ぼしという名の自己満足に、私は付き合わされているのだろうか。

わからないけれど、そんな風に考えても良いようにはならないことはわかっている。

私は私として必要とされたのだと、そう思っておけばいいのだ。

難しいことなんてなにも知らないような顔をして笑っていればいい。

きっとそれだけが、私に求められていること。


「こんな話ばかりでごめんなさい。
甘いものは好きかしら? うちのパティシエが張り切って、苺のタルトを食べきれないほど作っていたから、是非」


憂いを帯びた表情から一変して可憐な花のように笑ったその顔は、どことなく母を思い出させた。