「亜美さんが来てくれるのを、今か今かと待っていたのよ。こちらから会いに行こうかと思ったけれど、嘉人が止めるんですもの。本当に、ずっとあなたに会いたかったのに」

「私もずっとおばあさまたちに会いたかったので、またお会いできて嬉しいです」


間違っても『お祖母ちゃん』などという呼び方をできないような人物のため、私は上品すぎて背中がかゆくなるような言い方でその人を呼んだ。

長谷川の祖母は、長谷川グループの現会長なだけあり、貫禄と余裕が感じられる。

齢七十二歳、まだまだ現役だ。



「あの時は本当にごめんなさいね。あとで嘉人から怒られたわ。あの場でなくても、あんなとこは言うべきじゃないって。
ずっとあなたの存在は知っていたのに、雅人とのことがある手前、会うこともできずにいたから。やっと初めて会うことができたら、どうしてそばにいてほしくなってしまって・・・・」


養子になるかならないかの話のことだ。


私の父、長谷川雅人は、この家から事実上勘当されていた。

完全に決別して生きていた。

だからその娘である私の存在は知っていても、後継者としてどうこうする気などなかったのだろう。